たった一つの約束さえない恋
彼は
“声が聞きたい”と電話すれば電話に出てくれる。
彼から電話をかけてきてくれたことはない。
それでも彼と電話で話す時間が幸せで。
彼に、
“会いたい”と言えば、彼は都合をつけて会ってくれた。
彼を想ってるだけの日々より、彼に会えることが、彼を独占している事実が嬉しかった。
例え、彼の心までは独占出来なくても。
彼に、
『好き、と言って』と言えば、彼は言葉だけ、形だけの言葉を言ってくれる。
でも、“愛してる”とは言ってくれない。
それが彼が設けた境界線-…
“好き”は友達に使う言葉。
“愛してる”は愛しい人に使う言葉。
幸せ、でも彼の心は手に入らない。
彼は女の私を相手にしても、一度も触れることはなかった。