たった一つの約束さえない恋





『私が無理を言った、あの日から…
 あの子に“好き”って言わなかったでしょ?』






噂であの子が不安になっていることを聞いた。



あの子が一番の彼、そんな彼があの子に飽きた訳じゃない。







『……私が言わせてたから…。
 あの子に一番言いたいことを私が言わせてたから、同じ言葉をあの子には言えなかったんだよね?』






だって、彼は言っていたからー…





あの子に初めて告白をしてOKをもらった時。





「今は“好きです”の言葉を言うのに精一杯だ。
 本当は好きよりもっと、それ以上の想いだけど…。

 だけど、いつかは言いたい。
 たった一人の、俺の一番大事な人に、プロポーズをする時に“愛してる”って」






…そう、照れながらも話してくれた彼は、



きっと、今まで見てきたどんな彼よりも一番輝いていた。








『……ねぇ?
 今、あんたの一番大事な人はさ…。

 今も、あの子?』







『うん、俺の一番大事な人は“あや”だけ。
 片想いの頃より、付き合えた時より、今、心から想う、あいつが俺の一番だって』






すっごい真剣な表情で話してくれた彼。



だから私は心から想うよ、君とあの子がいつまでも幸せでいてほしい、って。








< 28 / 33 >

この作品をシェア

pagetop