たった一つの約束さえない恋
“声が聞きたい”
そう電話で言えば、電話に出てくれたね。
“会いたい”
そう言えば、都合をつけて会ってくれたね。
“好き、と言って”
そう言えば、形だけ、それでも言ってくれたね。
君から、
“声が聞きたい”と、
“会いたい”と、
“好き、と言って”なんて言われたことない、そんな恋だった。
君が近くにいても、
君が隣に居てくれても、
それでも君はいつも遠い存在で、君はいつもあの子の“彼”だったー…
“この日に会おう”
“この日にデートしよう”
“腕を組んで歩こう”
“恋人繋ぎをして歩きながら語り合おう”
どれも……どれも君と結べた約束なんてない。
それでも、確かに私は幸せで、幸せな恋をした。
だから、もう十分。
もう十分すぎるほどに私は彼に恋をした。
精一杯、彼に我儘を聞いてもらいながらも、恋が出来た。
だから、もういいんだ。