ご主人様のお膝元!?

始まりの日

私が起きた時にはもう、

家族は皆死んでいた。



―始まりの日―



~斎場~

「娘さんが起きた時にはもう、ご両親生きてなかったんですって?」
「そうらしいわよ。ほんとお気の毒な話よねぇ・・」
「って、奥さん!後・・」
「あ。」
「ぇ、えっと、今回は、とても残念な事で・・」
「・・・いぇ、悪いのは父ですから。」


私の両親、
稲口和也と稲口弘美は
和也の仕事の取引先の
吾妻邦彦の手によって
殺められてしまった。

それも、
和也の自分勝手な性格と
人を小馬鹿にするような
言い分により生まれたものである。


「・・・おばさん、なぜ、私だけ、生きているの・・?」
「・・それはね、貴方のお母さんが、身代わりになってくれたからよ。」
「お、お母さんが、身代わり・・?」
「そうよ。お母さんは、貴方を全力で守り抜いたの。あの、冷酷な吾妻からね。」
「・・・お母さん。」
「だからこそ、貴方は全力で生きないといけないのよ。お母さんのためにもね。」
「・・はい、分かってます。」
「・・・こんな話しちゃってゴメンなさいね。これからは、私のことを母だと思ってたくさん甘えていいんだからね。」
「・・・おばさん、ありがとう。」
「いいのよ、陽菜ちゃん。おばさんこそ、ありがとう。生きてくれていてありがとう。」


そう言うとおばさんは、
私を痛いくらいに抱きしめた。
それが、あまりにもお母さんの温もりに似ていて、
私は抑えきれない涙を
全部流したんだ。







「・・お母さん。」





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