アタシはイレモノ
腕なんて折れそうなくらい細いし、筋肉がついているようには見えない。


「考えてみてよ。俺が転校してきてからあの子は何度も男に呼び出されてる。


そして、無傷で教室に戻って来るんだ」


川上君は、亜耶を思いだすように目を細めてそう言った。


「それは、告白を受けただけで何もなかったからでしょ?」


「世の中、そんなにいい男ばっかりじゃないよ? 告白されて逆上する男もいるし、最初から傷付ける事を目的で呼びだす男もいる」


「そうかもしれないけれど……」


あたしは口ごもってしまう。


「俺が転校してくる前からの告白回数を合わせたら、何百回に上るんじゃない? それなのに、彼女は全く傷付いていない」


「そ、そんなのわからないでしょ!? 傷付いた亜耶が無理して笑っているだけかも!」


「それはないね」


川上君はあたしの意見をアッサリと否定した。


「どうして言いきれるの?」


「1度傷付けば勉強するハズだ。男の告白に付いて行っては危険だとね。


でも、彼女はどんな相手だろうと呼ばれれば付いて行く。今日みたいにね。つまりそれは、傷ついた経験がないからだ」
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