アタシはイレモノ
「あたしたちも先輩を探しています。一日でも早く帰ってきてほしい。だってあたし、先輩の事が……」


栞理がそこまで言い、喉を詰まらせたように黙り込んだ。


これは栞理の演技だ。


あたしはすぐにわかった。


栞理は今はもう先輩の事なんて目に入っていないはずだから。


でも、そういう設定にしておいた方がここに来た理由を説明しなくてよくなる。


あたしは黙って栞理の様子を見ていた。


「先輩の私物とかって、見せていただけませんか?」


栞理が次に言葉を発した時にはその目は赤く充血していて、涙をこらえていたよ

うに見える。


すごいな。


あたしは素直に関心してしまった。


栞理は女優にでもなれるんじゃないだろうか。


それを駆使して今まで何人もの男女を自分の手玉に取っていたのかもしれないが、特技として認めざるを得ない演技力だ。
< 223 / 275 >

この作品をシェア

pagetop