アタシはイレモノ
これから
それからあたしは自分がどうやって家まで帰ったのか全く覚えていなかった。


気が付いた時には部屋のベッドに横になっていて、後から聞いた話では川上君がタクシーをつかって送ってきてくれたとのことだった。


あんな悲惨な事件があったのに、亜耶の死体も栞理の死体も2人の男の死体も、見つからなかった。


ヘビがすべて食べつくしてしまったから、みんな行方不明ということになっていた。


そして、日曜日。


あたしは公園のブランコに乗っていた。


最初亜耶を見つけたあの公園だ。


足元にはリリがいる。


「おはよう」


そう声をかけられて顔を上げると、川上君が立っていた。


「おはよう」


あたしは笑顔を向ける。


最近、あたしの肌の調子がすごくいい。


吹き出物はでなくなり、透明感が出てきた気がする。


イレモノの寿命は10年から20年だと言っていた。


これからそれだけの年月をかけて、あたしはイレモノとして成長していくのだろう。
< 267 / 275 >

この作品をシェア

pagetop