アタシはイレモノ
☆☆☆

それからあたしたちは教室を出て、体育館へと向かった。


昨日も今日も体育の授業がなくて、川上君はまだ体育館へ行った事がないのだ。


一階の廊下を渡り、扇形をした大きな体育館のドアを開ける。


体育館のドアは体重をかけなければ開かないくらい重たいけれど、川上君は片手で軽々と開けてしまった。


体育館の中では体育部活の生徒たちが掃除をしていて、床がピカピカに輝き始めている所だった。


ドアの真正面には大きなステージもある。


「立派な体育館だね」


「うん。時々何千人っていう卒業生たちを呼んで、ここで同窓会をしているらしいよ」


あたしはウラシマから聞いたことのある話を、そのまま川上君に話した。


「へぇ。じゃぁ俺たちもいつかここで同窓会をするんだね」


川上君はそう言って微笑む。


その言葉にドキッとしてしまうあたし。


いつかあたしたちは卒業して、そしてまたここで再会する。


そんな遠い未来の事がすぐそばにある様な気がした。


「さぁ、次は更衣室だよ。体育館の場所がわかっても、更衣室を知らないと着替えられないからね」


亜耶がそう言い、あたしたちは体育館を後にしたのだった。
< 55 / 275 >

この作品をシェア

pagetop