アタシはイレモノ
学校へ来てから心配そうな顔は浮かべるものの、亜耶から話しかけては来ない。


本当に心配や不安があるなら、今の時間にでも話かける事ができるはずだ。


それをしないと言う事は、心配しているフリをしているだけかもしれない。


そう思った時、不意に目の前に影が出来てあたしは顔を上げた。


そこには川上君が立っていて、あたしは一瞬ポカンとしてしまった。


「な、なにか用事?」


なんとか声を出してそう聞く。


「昨日の約束、覚えてる?」


小首を傾げてそう聞いてくる川上君に、ドキンッと心臓は跳ねた。


川上君、覚えててくれたんだ!


そう思い頬がカッと熱を帯びるのを感じる。


「も……」


『もちろん!』と言いかけて、栞理を目があった。


栞理はジッとこちらを見ていて、その目は鋭く釣り上がっている。
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