古椿
プロローグ
人間というものは、どんな生き物よりも醜いものだ。
憎悪、悲哀、嫉妬。
様々な想いが交錯する中で、それでも自身だけは愛しくて仕方無い。
そんな泥水のように濁った感情の中で、必死にもがいて生きている。
だけどある日、感情の沼でもがくのを諦め沈む男が現れた。
水下に溜まっていた真っ黒な砂へ落ちたら最後、骨の髄まで漆黒に染まる。
それが初めて生まれた妖怪だった。