はい、魔法会事務所です☆
振り向くと先輩教師がいた。
「あっ、いえ、あの、その、これは」
青白くてヴァンパイアみたいな雰囲気の彼は、僕の動揺っぷりに細い眉をひそめた。
そして神経質そうにメガネをクイッと上げて、僕の後ろを覗きこもうとする。
僕は慌ててとうせんぼをするように腕を広げた。
「ち、ちょっと待ってください先生…」
「待たん、どけ」
僕の抵抗も虚しく、ヴァンパイアメガネは教室のドアをガラッと開けた。
どどどどどうしよう……。
まさかこの通路をこんな時間に通る人がいるなんて…。
多目的教室は、古い旧校舎の一階の端にあって、あまり使われることがないのでほとんど人気がなかった。
だから生徒たちが僕たち教師に隠れてなにかをするには絶好の場所だというわけだ。
最近、この多目的教室でとあるカップルがいけないことをしているとの噂を生徒伝いに耳にし、これは日頃の名誉挽回へのチャンスかもしれないと、一人でコッソリ様子を伺いに来たのだ。
なんせ僕のクラスはこの学校始まって以来初の「学級崩壊」状態になっており、もっぱらその責任は僕にあることは分かっていた。
今回も、不良生徒にビビって声をかけることもできず、グダグダしているうちに、まるで「覗き」のようになってしまったのだ。
ああしかし、これはまずいぞ……。
ヴァンパイア先生は躊躇もせずに2人の生徒のもとへ行き、なにやら少し話したかと思うと2人を新校舎に帰らせた。
そして、僕のほうへ向くと、ぴくぴくと口の端を引きつらせながら言った。
「……君、職員室へ来たまえ」