【短編】ソーソー教の教祖様
ドー。

大きな音が、部屋の壁を揺らす。

ドードードー。

ドの連続。

カズオの目があたしを見た。

あたしは、思わず大きく頷く。

カズオも意を決したような真剣な表情になり、ドー。

レーミーファー。

順調に音階を刻む。

けれどやっぱり、ドー。

ソではなくド。

「もーヤダ!! ヤダヤダ! こんな楽器こうしてやる!」

足をバタバタとさせて、抱えあげたトランペットを床に投げつけようとする。

「壊れるよ!」

すかさずあたしは叫んだ。

その言葉で、カズオの右手は固まる。

そしてゆっくりと、トランペットを膝の上に置いた。

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