記憶の片隅に―I don't forget you―
と、そのとき、後方の二列シートに座る男性に目が釘づけになった。 


まさか……よね。 


こんなところにいるわけなどないし……。



窓ガラスに映る男性の横顔が、よく知った人物に似ていた。 


見間違いよね……。 


それにしても、よく似ている。 


あんまりジーッと見ていたものだから窓ガラス越しに目が合い、彼はこちらを振り向いた。 



―――…!! 



正面を向いた彼は、横顔以上に私の知った人物にそっくりで、息を呑むほどだった。 



“どうかしたの?”というような顔つきで、彼は首を傾げた。


その顔から慌てて目を背けた私は、身体を小さくし、シートに身を預けた。 



終点の東京駅まで、胸がドキドキして、さっきまでの眠気が一気に吹き飛んだ。 



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