記憶の片隅に―I don't forget you―
ぐるぐる周りを見渡すけれど、すでに二人の姿はなかった。 


……えっ?本当に?


信じられない。
二人とも薄情すぎるよ。


20歳にもなって、スキーが初体験という私に問題はあるけど、虚しいスキー旅行の幕開けとなった。   

その場でしばらく二人を待っていたけど、なかなか戻ってこない。


ポツンと一人で立っている私は、周りの人にどう映っているんだろう。



大きな溜め息とともに、スキー板を外して、一人レストハウスへと向かった。



入り口の前にスキー板を並べ、ドアを開けると、暖房で暖められた室内に、ようやく落ち着きを取り戻した。 


ポケットから小銭を取り出し、ホットコーヒーを注文すると、窓側に陣取った。 


ふーふー言いながらカップに口をつけると、温かさが身体中に染み込んでいく。


……はぁ、美味しい。



窓ガラス越しに、滑らかにシュプールを描きながら滑りゆく人たちに目を走らせた。


あんな風に滑れたらカッコいいんだけどなぁ……。



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