記憶の片隅に―I don't forget you―
――カタンッ。
片手にコーヒーカップを持った男性が椅子を引き、私と斜め向かい合わせに腰を下ろした。
帽子を脱いだ彼は、無造作にダークブラウンの髪の毛を掻き上げ、手櫛で乱れた髪の毛を整え始めた。
よく見ると、目鼻立ちのはっきりとした、端正な顔立ちをしている。
手入れの行き届いた形のいい眉毛、男性にしては長めの睫毛。
スッと通った鼻筋。
コーヒーを手にする仕草もなんだかキマッテいる。
「何か?」
「えっ?……いや、何でもないです」