騎士
そんな私に少年は安心させるためか、背中をさすってくれたり手を握ってくれたりしてくれた。

そんな彼に容赦なく飛びついて号泣して、少年の服を濡らした覚えがある。

警察や親がくるまでも、女性の人たちがジュース奢ってくれたり一緒に話して笑い合ったりで大分落ち着くことができた。

親や祖母が来てくれたときは泣きながら抱きついたけどね。


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『さっきはありがとう!助けてくれて!』

別れ際に私は少年に別れを告げる。
命の恩人ともいえる彼に。
精一杯の感謝の思いを伝えたかった。

『うん。無事でよかったよ』

心からの満面な笑顔を浮かべた私に、彼も微笑みかけてくれる。

『私は雪那(ユキナ)!!』

『僕は翔(ショウ)。』

『じゃあまたね!!』

もう会わないだろうけど、少しの期待を込めてこんな言い方をした。

元気にいいながら、お母さんとお父さんと手を繋いで家に向かいだす。

『うん。また』

少年…翔は私に軽く手を振ってくれる。

『お姉さんたちも、ありがとう!』

『どういたしまして。会ったときは、また一緒に話しましょうね』

女性の人たちもそう言ってくれた。

すごく嬉しかった。

『うん!バイバイ!!』

もう一回そう言ってみんなの顔を見てからみんなに背を向け、お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃんの温かな目に包まれながら帰った記憶がある。

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これが、私と少年…翔との10年前の初めての出会い。
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