騎士
そう。今話しかけて来たこの男、私が翔と呼んだ人物は10年前私を助けてくれた少年と同じ名前だ。
それもそのはず。今私の横にいる翔と、10年前私を助けてくれた翔は同一人物だ。
あの事件から数日たってから、翔と私がご近所さんということがわかった。
それからは私は翔と一緒に登下校する事になった。
小学、中学、高校とずっと一緒の幼馴染の腐れ縁。
「まぁいいや。10年前のことでも考えてたのか?」
「うん。まあそんなとこ」
「あのとき、お前容赦なく俺の服涙でぬらしやがったよな」
ニヤニヤしながら…だけど、どこか懐かしそうに忘れてしまいたい記憶を思い出させてくる。
「あっ、あれは…その…」
顔が赤くなる。
あのときはとにかく怖くて…誰かに甘えたいがままに、どうせもうあわないだろうと思って抱きついただけで…。
「しょっ、翔だって女性の人たちに必死に助け求めてたじゃん!!」
「あれは雪那を助けるためにやったこと。助けとか求めるには小一だったし、可愛いげなく冷静にいったら助けてくれないかもしれないだろ?ああいうのは大袈裟に言った方がいいんだよ。」
「じゃああれは演技?翔ってあのときからそんなこと思ってたの!?ゲッス!!この腹黒!」
「あのときは雪那も可愛いかったよなー」
「え、何その言い方。なんか変態みたいで気持ち悪い。マジやめて。お願い腹黒。」
「…今ではこの通り、かわいさの微塵もなくなりやがって…。
あとその呼び方やめろ。」
心底残念そうな目で見られる。