騎士
『え……ッ?』

涙が溢れそうになるのを堪えながら私は声がした方に顔を向ける。

涙のせいで相手の顔はよく見えないが、
自分と同じくらいの男の子ということはわかった。

『君は…誰かな?この子のお友達?』

おじさんは騒ぎを起こさないためだろう。
私に話しかけてきたときのように、愛想良くその少年に尋ねる。

『別に、友達じゃないけど。』

『そっか。じゃあおじさんはこの子を家まで連れて帰らなきゃいけないから、バイバイ』

素っ気なく返した少年におじさんは優しく笑いかける。

『帰る場所なんてあんの?』

『え?』

おじさんがびっくりしたように聞き返す。

『おじさん、その子の本当の親じゃないんじゃない?』
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