黄昏を往く君は
3
「おはよう」
私がぼんやりと覚醒すると、赤の青年がそばにいて、聞き慣れない言葉を云った。
私とこの世界の多くの人々は、『朝/夜明け』という現象を知らない。戦争が始まる前に記された書物が伝えるばかりだ。
青年が水筒を渡してきた。
熱が出て、汗をかいたせいで、喉が渇いていた。
私は、今度はそれを受け取ることができて、ごくごくと飲んだ。
毒が入っているかもしれないという考えはとっくに捨てた。殺すつもりなら、いつでもできたからだ。