黄昏を往く君は

「殺してくれれば良かったのに」
 こぼれた言葉に、碧は訝しげな顔をした。
 一度溢れると、言葉は止まらなくなる。
 私は唇を噛んだ。
 でも、それは到底抑え切れるようなものではなく、ついに私は喉が引きつるようになるのを感じながら、泣き言を口にした。
「私は赤の国の兵士を殲滅できなかった。それどころか、助けられて――私は祖国を裏切った。私は非国民だ。生きている価値がない。私は兵士なのだから、戦場で、敵兵の攻撃によって、死ななければならない、の、に……」
 こんなところで、こんなときに――強い衝動が胸を衝いた。
 目から零れるものは決して涙ではない。
 なぜなら、ロボットは決して泣けないからだ。兵器に悲しむという機能はついていないから。


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