黄昏を往く君は
「茜」
碧が私の名を呼んだ。
肩を掴まれる。彼が私の顔を覗き込む。
「落ち着けよ。君は今混乱しているんだ。ひどい傷を負ったから」
混乱などしていないと告げたかった。私は彼を拒絶したかった。
それができない自分の弱さを私は嫌悪した。
私は誰かに慰められていい人間ではないのだ。
今の私は兵士ではない。少なくとも精神的にはそうでなくなってしまったのだ。
私が敵の少年兵に味方の面影を重ね、夢の中で生きたいと願ったときから、私は兵士であることをやめてしまった。
冷酷無慈悲で、容赦のない、前線で敵味方に畏れられ、恐れられた軍人はいなくなり、後に残ったのは、戦争のほかに能のない、しかも今はそれすらもできなくなった、ただの役立たず。