黄昏を往く君は
私はびくりと身体を震わせた。
逃れることも叶わぬまま、唇が重なる。
いつか知ったような、柔らかな感触。
触れては離れ、私の涙を舐め、また触れる。
その事実は私を激しく動揺させ、私の抵抗を妨げた。私はただ身体を強張らせ、されるがまま、誓いのような接吻を享受した。
それは長く続いた。
碧は私を放さず、私の知らない優しさで、私をなぶった。
熱っぽい吐息と喘ぎが洞穴にこだまする。我に返った私はもがき、碧から逃れた。
「茜」
再び私の名を呼ぶ声は柔らかい。慈愛に満ちた、でもどこか悲しげなまなざしで、碧は云った。
「二度とそんな悲しいことを口にしないでくれ。たとえ君がどんなに強烈な死にたさと戦っているとしても」
私は愕然として、声を発することも、身動きをすることも、無言で出ていく碧を追いかけることもできなかった。