黄昏を往く君は
碧は語り出した。
「俺は、今は赤の国に仕えているが、生まれは赤の国じゃない。黄の国っていう、赤の国と青の国の境界にある小さい国だ。知っているか?」
「傭兵の国……」
私は呟く。
「そ。俺はガキの頃に親父と一緒に赤の国に来て兵士になった。
俺はまだマシな方でな。その頃にはもうどっちの国も人材不足に悩まされていたから、人身売買とか、ひどいときには子供をどこかから拐ってきて兵士にするとか、そういうのがまかり通っていたんだ。それで、幸運な俺は赤の国の兵士になって、色々やらされた。倫理的に問題がありまくりなこと――でもさ、戦時において倫理観なんてもんはクソほどの価値もないんだよ。どっちも相手に勝とうとして必死で、どんなことも正当化するし、互いが互いのことを悪だと思っている。だからなんだ、っていう話だけどな。戦争ってのはそういうものだし。話が逸れたな、だからなんだっけ、えっと、そうだ。この戦争が終わったら――俺が生きているうちに、その日が来れば――、俺は故郷に帰りたいと思っている。親父の骨を持ち帰らないといけないし、それに、黄の国はとても綺麗なところなんだって。こんな歌もあるしな。――ああ、恋し我が芳しき丘、我が高き峰、我が清き水、我が愛し人……」