黄昏を往く君は


 碧の声が洞穴の中に朗々と響いた。
 不思議な響きの歌だった。
 その口ぶりから推測するに、碧は故郷をあまり覚えていないのだろう。それでも、祖国をこれほどまでに深く愛している。
 ――私の空虚な部分がチクリと痛む。
 碧はなおも語る。
「それから、名前の由来な。碧っていうのは青色のことだ。君と同じ、敵国の名ってわけ。そのせいで、ガキの頃はいじめられたりしたな。でも、きちんとした意味があって――、この世界に夜明けが来るように、という意味だそうだ」


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