黄昏を往く君は


 私は深い傷を負った。
 相手は少年兵だった。
 か細い腕で、サーベルを握っていた。
 浅黒い肌。黒い大きな目。
 色彩が違う。血と雨とに濡れた赤の軍服。それなのに、非業の死を遂げた少年たちの笑顔が、苦悶の顔が――色素の薄い混濁した目で私を見つめ、痩せ細った手を私に向けて伸ばし、

 ――たすけて。

 死んでいった――私が殺した――少年たちの顔が脳裏をかすめ、そして赤の少年兵の鬼気迫る幼顔に重なり、――身体が震えた。
 私の中に封じ込めていたものが目を覚まし、叫びはじめる。
 ――嫌だ、殺したくない。

 動きが鈍る。
 私は少年兵のサーベルを胸に受けた。
 血が散る。
 全身に走る痛み、心臓を直接叩かれたような衝撃。

 ――高貴な青が穢れる。

 私はすぐに私を、兵士としての、兵器としての、ロボットとしての、冷徹で強靭な私を取り戻し、赤の少年兵を斬った。




< 6 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop