黄昏を往く君は
すぐそこに赤の兵士が立っていた。
青年と呼ばれる年頃だ。
私はこの年頃の男をあまり見たことがない。
前線に来るのは、怒鳴り散らすか、媚を売るしか能のない軍の幹部どもと、人員補充の少年たちだけだから。
肌色は、赤の国の者にしては珍しく、飴色。
感情のないチョコレート色の双眸が私を見つめている。
右手にサーベルを握っている。いや、左手か?
頭がうまく回らない。
私はめまいがして、仰向けに倒れた。
赤の兵士が近づいてくる気配がする。
雨が私の顔に降りしきる。
私の死はどうやら昏睡の間に訪れるらしい。
胸を占めたのは、恐怖だったか、安堵だったか。もう誰も殺さずに済むのなら。
雨がすべてを洗い流す。私の存在すらも。
さようなら、大嫌いな世界。
肺の吐息が尽きるとともに、意識は昏い深淵に落ちていく。