brass band
『むなしいね……』
彩ちゃんが、何を悟ったのか返事を返してきた。
『そうだね。無くしたものは大きすぎたかな』
校門をくぐれば、吹奏楽の音が聞こえる。
思わず足を止めた。
そらは、とても拙く、ボロボロで、歯車と歯車が噛み合っていない。
ピッチも最悪ながら、縦の旋律もあっていない。
しかし、彼らには決して言わない。
彼らの『問題』は、彼らが『答え』を探すべきなのだ。
彼らの創る音楽に期待をして、私は決して言わないのだ。
『咲花ちゃん、皆上手くなるといいね』
『……なれるさ。あの子達なら』
そうであってほしいと、心の中で願いながら、そう呟いた。
『……いこうか』
歩き出し、教室へと向かった。
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