あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「私の使い魔は、うさぎのラッキー。私たちの習慣は追いかけっこをすることでした」
喋り出してみれば、もともと頭脳明晰な子なのだろう。
彼女はしっかりとした口調で当時の状況を語り出してくれる。
「追いかけっこといっても、魔力を使ったりして身体を鍛えていたんです。けれど、あの日いつもと同じように追いかけっこをしていたら、突然、ラッキーが硬直して……金の瞳は黒くなっていました」
「黒く……?」
「はい。異様な光景だったので、今でも瞼の裏に焼き付いています。そして、内容はわかりませんでしたが、ラッキーはずっと何か言葉を繰り返していました」
言葉……?
「そして、魔法陣が現れて……ラッキーはその中に吸い込まれるようにして消えてしまいました。ラッキーが魔方陣に入った途端、私たちを繋いでいたものが、プツリと途切れた感覚を感じました」
そのときの感覚を思い出したのだろう。
ミムロちゃんは、顔を苦しそうに歪めた。
お母さんがすぐに彼女の肩を抱いて、背中を摩った。
彼女はそれでも気丈に振る舞い、作り笑顔を見せる。
「その魔法陣って、どんな模様でしたか?覚えている範囲でいいので、教えてください」
話を聞いて考え込んでいたクレアがミムロちゃんに問い掛ける。
「……確か、翼が二つ交差していて、真ん中になにか、印があったような……。ごめんなさい、あの後私も意識を失ってしまったので、あまり覚えてないんです」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
クレアはそういってミムロちゃんに向かってニッコリ微笑むと、再び考え込んでしまった。