あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]

 すると、ショウが不安げにクレアの顔を覗き込んだ。


「クレア、ムリしなくても……」

「いや、これは言った方がいいことよ。 私たちが知っていることで、この事件の少しでも解決の糸口になれば」


 二人だけが知っているなにかがあるらしい。

 心配しているショウとクレアはしばらく目線を交え、考えが纏まったのか、こちらを向いた。

 クレアは短く息を吐く。


「さっき、ミムロさんが言っていた、魔法陣。私も見たことがあるんです」

「えっ」


 突然のことに、あたしたちは言葉を失った。

 印の意味を知っていると予想していたけど、“魔法陣自体”を見たことがあるって……。

 想像以上の情報に一瞬思考が止まった。

 
「あれは、私とショウが一度、“心”が途切れたときのことでした。まおさんたちは、私とショウに過去にあったこと、知っていますよね」


 クレアと目が合う。

 あたしはゆっくりと頷いた。

 クレアとショウは再び見つめ合う。


「私たちは、傷を負い、ショウは変化することができなくなりました。人間の姿でしか、いられなくなりました。しかも、ショウが目覚めたのは、最近。ショウが目覚めるまでの間、私たちの絆は途切れたまま」


 その言葉に胸が締め付けられる。

 もし、これがあたしとシュガーだったら。

 あたしはきっと、耐えられない。

 あたしの半身、魂の片割れであるシュガーがいなくなるなど、考えられない。

 シュガーの頭に思わず手をやると、彼はわかっていると言わんばかりにその手に擦り寄ってくれる。

 暖かい。


「それでも、私達の絆は、切れなかった。だからこうやって今一緒に居れるんです。けれど、絆が切れたときと、それから何回か、悪夢を見ました」

「悪夢……?」


 聞き返したあたしに、クレアはこっくりと頷く。

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