あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「ええ。あれは、悪夢としかいいようがないものでした。暗くて、暗くて、重くて、重くて、息もできないくらい深い深い闇。私が意識を失ったあと、幾重にも重なって聞こえる声が、意識に話しかけて来るのです。最初は聞き取れないくらいぐちゃぐちゃの音でした。けれど、何度も聞くうちにそれは言葉だと分かった。何度も何度も同じ言葉が繰り返されていました。その言葉はこう言っていた。
『返せ』と」
『返せ』……?
「そして、あのミムロさんが言っていたのととてもよく似た魔法陣が現れました。赤く不気味に光を放ち、私の意識は吸い込まれそうでした。そして、魔法陣の模様は……交差した翼と、中央には……国の紋様がありました」
「国の?」
「それって……」
「まさか……?」
嫌な予感が、過ぎる。
背筋に、冷たい感覚が流れていく。
そんなはずはないと思いながら、口に言葉を乗せる。
「ウェズリア……?」
クレアはゆっくりと力なく首を左右に振った。
そして、あたしの目を真正面から強く見つめた。
「あれは……二つの交差した翼の紋章は──天界 ルクティアのもの」