あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 前にこのお城に来たときとは、状況が全然違うからしょうがないけれど、危険を感じずにお城を歩けるとは思っていなかった。

 壁に隠れて誰かこないか、探ったりしなくていいなんて……!

 やっぱり争いは駄目だね。

 精神削られる。

 オスガリアでの戦いのときと城の構図は変わっておらず、あたしは迷いなく進むことができた。

 そして、王の間に行くと……。


「いらっしゃい、麻央」

「紗桜ぁ!久しぶり!」


 床まで波打つ長い白銀の髪に、金の瞳と青い目というオッド・アイを持つ美しい天使がいた。

 大理石の床に引きずるくらい長い翼を、身体の前で交差させ、自分の身体を守るようにしていた紗桜はバサリと翼を広げた。

 翼を広げると、横幅3メートルはありそうだ。

 あたしは遠慮なく紗桜に抱き着いた。

 紗桜は慣れた様子でしっかりと抱き留めてくれる。

 柔らかな花の香りに包まれながら、そっと辺りに目線をやった。

 王の間は、前と打って変わって大理石の床から木々が生い茂り、蔦が壁を伝っている。

 天井は戦いの名残が残ったまま、一部が打ち抜かれ、日の光が直接降り注いでいた。

 前とは全く雰囲気が違っていた。



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