あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「シュガーと同じでまわりに聞こえるくらい魔力を高めるとか?」
「あら?さっきも言ったとおり、ルクレーシャは普通の使い魔ではないわ。まず、彼女自身が、神。天使の力も使えるし、私など軽々超える力を持つわ」
紗桜の言葉に、納得。
神様なんて、あたしの常識なんて通じないようなこともやってのけるのだろう。
それにしても、ルクレーシャもルクティアの住人のはず。
彼女も、紗桜と一緒で例外で下界に降りてきているのだろうか。
けれど、先ほど紗桜は天界の者と連絡を取ると言っていた。
もしかしたら、何かしら天使間で行き来できる方法があるのかもしれない。
思わず、長考してしまうと、感嘆の声が上がった。
「それにしても、キレイな毛並みですね~」
クコが、ルクレーシャを撫でている。
あたしたちは、ひゅっと喉が鳴り、息をすることを一瞬忘れた。
それ、神様!神様だから!
止める間も無く、クコは普通の猫に察するように破顔してもふもふしまくる。
それでも、ルクレーシャは平気な顔で撫でられている。
ちょっと嬉しそうだ。
ゴロゴロと猫特有の声を出して目を細め、気持ちよさそうにしている。
……顎の下、弱そうだな。
神様といえど、見た目はやっぱり猫。
とにかく、このお上品なお猫様が紗桜の使い魔であることはわかった。
「ルクレーシャはここにいる。行方不明にはなっていないわ」
「もちろん、あたしも」
〈いるぞ〜〉
紗桜に続いて手をあげると、肩の上でにゃーん、と声を上げるシュガー。
「私もです」
「オレはここにいるよ」
その後クレア、ショウと、それぞれが返事をした。
けれど……。
「あれ……?」
クコだけが──顔を真っ青にしている。
「クコ?」
まさか──。
「サンの声が、聞こえません」
顔面は蒼白となり、声が喉につかえて、出ないようだった。
ウソ、そんな。
「さっきまでは、確かに感じていたのに……!」
クコは、自分の肩を抱き、ガタガタと震え出した。
すぐにクレアが今にも倒れそうなクコの肩を支える。
ほんわかしていた空気が、一瞬で凍りつく。
緊迫感が、空間を支配した。
「もっと早く、気づいていれば……」
「サン、サン」と使い魔の名前を繰り返す、クコ。
「まだ大丈夫よ。通じなくなっただけかもしれない。たぶんまだ、近くに気配を感じるはず。ちゃんと、心を鎮めて集中して。そう、神経を研ぎ澄ますの」
紗桜が極めて冷静に、クコに語りかけ、彼女の呼吸は少しだけ安定する。