あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
 

「あたしも、探るわ!」


 アカシを召喚し、柄頭に埋まった宝石を額に当て、目を閉じる。


『アカシ、応えて』


 魔力を送れば、アカシは無言のまま、すべきことをわかっていたようですぐに魔力を迸らせる。

 今はアカシの魔力の蔦が無いオスガリアにいるため、アカシの力はここに及ばない。

 しかし、ウェズリア本土にクコの使い魔がいるのなら、きっとアカシの魔力は感知するはず。

 国内にいるかどうかわかるだけでも、範囲は絞れる。


『いる』


 アカシは、その一言だけを放つ。

 そして、杖から魔力が消え、アカシの意識がウェズリア本土に移ったことが伺えた。

 パニックに陥ったクコを落ち着かせ、その事を伝えると精密なサンの場所を探させる。

 お願い、見つかって──!


「──いた!」


 大粒の涙を浮かべていた瞳を開け、クコは顔をガバリと上げた。

 その顔には、サンが見つかるという希望が見えはじめて来ている。


「場所は!?」

「ここは……暗くて、ジメジメしてて……。周りには、木、木、木。奥に、大きな建物が見えます。あれは……ウェズリアのお城?」


 そのヒントだけでわかった。

 そこは、ウェズリアの中央にある大きな大きな〈千年霊木〉。

 ウェズリアに程よい日陰を作り、大雨のときはウェズリアを守ってくれる。  

 そこには、歴代の最強魔術師たちの魂が集まっていると言われている神聖な場所だった。

 そして、アカシの本体。

 だから、アカシは早急に彼方に戻っていったんだ。

 向こうで探してくれているに違いない。

 しかし、普段は何人たりとも立入禁止のはず。

 サンは鳥だから、空を飛べば木に近づけそうだけど……空にはカカオの張った結界がある。

 もちろん、簡単には解けない代々王家に伝わる特別な結界だ。

 あたしだって、術式がわからないから、簡単には解くことができない。

 それこそ、何時間もかかってしまうだろう。

 それほど、大事で神聖な場所。

 なぜそこに、サンがいるのだろう。




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