あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「〈千年霊木〉一番外側の結界を少し緩めていただきました。しかし、わずかな間だけです」
幾重にも重なる〈千年霊木〉の結界の一番外側は、王家が代々守ってきた結界の一つだ。
この結果は、カカオのみが操ることができる。
どうやらカカオともう連絡をとり、了承も得たらしい。
リカエルさんの仕事の速さには本当に頭が上がらない。
他の皆も、準備万端だ。
あたしたちは、中庭に集合した。
「それじゃ、転送魔法陣を用意するから。あたしが魔法陣を出したら、皆は先に入って」
本来、行ったことのある場所にしか発動できない転送魔法陣も、アカシの力によって直接〈千年霊木〉内部へと繋がるものになっている。
「わかりました」
あたしの言葉にクレアは力強く頷いた。
クレアに頷き返すと、あたしは魔法陣に意識を集中し始める。
手のひらを前に翳し、目を閉じる。
ゆら、と風が吹いていないのに、あたしの髪が揺れ出した。
まるで、あたしから風が発せられているようだ。
手に魔力を込め、魔法陣を構築していく。
この作業も、随分と手慣れてきた。