あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]

 突然のことに、事態が飲み込めず、遅れを取る。

 ルクレーシャ、何を……。

 彼女が向かった先は──男、ではなくその後ろの木だった。

 木の前でルクレーシャが翼を力強くはためかせ、何かをつぶやく。

 すると、突然そこにあった木はなくなり、代わりに空間が開かれる。

 そこに、空間があったなんて……。

 あの男の力によって、空間がねじ曲げられていた……。

 あたしでも気付かなかったなんて……この人が相当の腕利きか、あるいは使える力が魔力ではないということだ。

 他にある力と言えば……天界の力“天力”しかない。

 さっき感じた妙な感じの力、そして男がルクレーシャに“同じ”と言ったのも、天力を持っていたからなんだ。

 でも……。

 それにしても、おかしい。

 天力にしたら、なにか……。

 ルクレーシャは極めて冷静に、淡々と男に語りかける。


「話は後よ。まずは、私たちの仲間を返してもらえないかしら」

「やはり、わかりますか?」


 男はニタニタと下品な笑みを浮かべたまま。


「仲間って、まさか」


 その様子に、あたしは驚くことしかできない。
 
 マントのフードを深くかぶっているため、口元しか見えない男が不気味に微笑んだ。


「フフフ。やはり、魔女様には気付かれないようですね。あなたは最強の魔力を持ってはいるけれど、天力は持っていない。だから、天力によって施された術などには、反応できない」

「く……っ」


 確かに、男のいうとおりだ。

 空間がねじ曲げられているのに、気づけなかった。



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