あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]

 そして、仲間が捕らえられていることも。


「お望み通り、あなたたちのお仲間はお返ししましょう」


 男が腕を高く掲げると、薄暗い空間に光が満ちて、そこには繭のようなものに包まれた塊が現れた。

 ……まさか。


「クレア?ショウ、シュガー!」


 あたしが叫ぶと、一つの繭の一部が剥がれ落ちる。

 すると、現れたのはやはりクレアだった。

 ただ、意識を失っているだけのように見える。

 でも、現れたのは、クレアだけ……。


「ショウとシュガーはどうしたの!?」


 まさか、行方不明……。

 サァ、と心臓が握り潰された感覚に陥った。

 でも、“心”が途切れた感覚もない。


「その二人ですか?知りませんよ。いたのはこの方のみです」


 どうして?

 絶対クレアと一緒にいたはずなのに……。

 けれど、それを考えているヒマはない。

 落ち着け。

 クレアの命がかかっているんだ。

 一つ、深呼吸をする。


「あなたの目的は、なに?」

「……あなたに教えてどうするのですか?」

「さぁ、どうするんだろうね。でも……ここに不法侵入したことは確かなこと。ここは、ウェズリア王家のもの。そういうものを取り締まるのは、あたしの役目なんだから」


 あたしはにんまりと微笑んだ。


「あなたを、捕らえる!」


 手に点していた魔法陣を前に構え、発動させる。

 雷龍を魔法陣から二匹呼びだし、男へと突進させた。


「まお!倒してはダメよ。捕らえていろいろと聞かなければならないことが、山ほどあるのだから!」

「もちろん!」


 ルクレーシャの注意を背に受け、あたしは駆け出した。

 もう得意になった防御結界を片手を動かすだけでクレアとクコの身体に張る。

 さっき放った雷龍は、軽々と男に避けられ、あたしのもとへとUターンしてきた。

 そして、あたしに巻き付くようにして、男を威嚇する。

 男は、宙を浮いていた。

 やはり、ルクティアの者なだけある。

 その背に翼がなくとも宙は軽々と浮ける訳だ。

 遠隔魔法だと、避けられる可能性が高くなるかもしれない。



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