あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
涼しい風が一切吹き込んで来ない窓辺を離れ、あたしは魔力をほんの少しばかり放出して全身を覆うように冷却魔法をかける。
「魔法のコツは、〈イメージする事〉ですよ、まお様」
「イメージね、ありがとう」
クコに言われた通り、地球にいた頃、日常的に使っていたエアコンをイメージする。
ひやりとした風が足元から徐々に室内を冷やしてくれるイメージで……。
すると、空気が変わってひんやりと冷たくなるのを感じた。
「さすがです。まお様。あとは身体の表面にのみ留める事ができましたら完璧ですね」
冷却魔法を発動することは無事にできたものの、身体の表面だけに止めることは出来ず、部屋全体を冷気が漂っていた。
しかも若干寒い。
冷やし過ぎた。
「失敗かあ」
エアコンをイメージしちゃったから、部屋全体に行っちゃったのかも。
しかし、クコは嬉しそうにあたしを褒め称えてくれる。
「私もこのメイド服が厚めの生地なので丁度暑いと思っていたところです。まお様のおかげで十分涼む事ができました!」
にっこり笑顔でそう言われちゃったら。
失敗なんてしてないかもって気分になっちゃう。
天使かな?
いい子すぎる。
「やはり、一番大事なのは水分補給ですね。喉は乾かれてますか?よろしければこちらをどうぞ」
「ありがとう」
彼女が手渡してくれたのは氷を浮かばせた良く冷えたクム(地球でいう、レモネードの様なもの)。
この世界に来てからあたしは専らこれを飲んでいる。
からからに乾いた喉にはこれが一番いい。
ほどよい酸味と甘味のバランスが絶妙で、気分すらもすっきりとさせてくれた。