あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 そして、厳しい顔つきになると、ルクレーシャは男を睨みつけた。


「あなた、なにをしているのか、わかっているの?あなたも天界の者ならよくわかっているはずよ!人を傷つけるということは、天界にとってどれほどの重罪になるのか……!」


 すると、男は呆気にとられたように一瞬黙りこんだ。

 けれど……。


「フハハハッ、そんなのは重々承知している」


 男は、身体を折り曲げ、笑った。

 いかにも愉快そうに。


「ならばなぜ!」

「なぜなら、これは罪ではないからさ」

「っ!?」


 ルクレーシャは顔を歪める。

 人を傷つけることが、罪ではない?


「これは“救済”なんだ」


 なにを、言っているの?


「私の悲願は、ウェズリア王国を手に入れること。私こそが、ウェズリア王国を正しく導ける……!」


 そういった男の声は、高く森の中に響き渡る。

 この人、本気だ……。


「なんだか、やはり話の埒が明かないようね」

「話せばわかっていただけると思っていたのですが」


 二人の間には、火花が散り始める。

 そして、また激しい交戦が始まった。




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