あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
言葉にしただけで、心臓がギュッと苦しくなる。
どうしたらいいのだろう。
ほかのみんなの使い魔も助けられていないのに。
自分もこんな状態だなんて……。
これじゃ、事件解決なんて、到底ムリだ。
じわ……と、涙が浮かぶ。
駄目だ、今のあたしの精神、やわやわのお豆腐ちゃん。
「……苦しいのは、わかるわ」
紗桜?
見上げれば、険しい表情の紗桜。
「でも、いつまでもクヨクヨしてたら、なにも変わらないわよ。そりゃ、ずっと悲しんでいることもできる。事件が解決するまで。でも、事件が解決するまでって?他の誰かがやってくれるのをただ待つの?厳しいことを言うようだけど、麻央は『魔女』なの。事件を解決する側、みんなを守る側なの」
紗桜の言葉が胸を刺す。
至極当たり前のことを、紗桜は諭すようにしかし厳しく言及する。
そうだ。
立ち止まってるヒマなんかない。
あたしがへこんでたら、ほかの人はどうなるの?
皆、状況がわからない中、今のあたしのようにとても不安なんだと思う。
ここで、あたしが動かなければ、この世界に呼ばれた意味がない。
あたしの、存在意義がなくなってしまう。
「よかった。目に光が戻ったね」
「紗桜……」
わかっていた、と言うように紗桜はまるで聖女のような笑みを浮かべていた。
解けかけていた精神を、紗桜は正してくれる。
上辺だけの言葉に囚われず、きちんと中身を見てくれる人。
ちゃんと、あたしを見てくれる数少ないあたしの親友。
「紗桜ぁ!」
「えっ、きゃあ!」
感情が昂り、抑えきれなくなって手を広げると、遠慮なく、彼女に抱き着いた。
実体ではないとはいえ、しっかりとした質量感と柔らかさと彼女の香りに心が洗われるようだ。
あたしを支えきれなかった紗桜は、フラフラと二三歩よろめいた。
「ちょっと……」
「ありがとうね、紗桜」
「……麻央」
大好きな親友。
昔と環境は変わっても、あたしたちは変わらない。
今までも、これからも大事な大事な親友だよ。