あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「そんな、まさか!」
「けれど、そう考えると天界の上層部がなにも言わないのも理解できるわ!」
「……考えすぎとかじゃ……」
「いいえ! 絶対そうよ!」
紗桜は拳を握って力強く言いきった。
そういえば紗桜、刑事ドラマとか大好きだったなぁ……。
なんて、ぼんやりと思ったりして。
けれど、そんな風に思考をどこかへすっ飛ばす暇もないほど、衝撃な事実が今そこに存在しているのだった。
「もし紗桜の言うことが本当なら、大事件だよ。使い魔行方不明事件が霞んじゃうくらいに!」
使い魔がいなくなることが大したことない、と言いたいわけじゃない。
しかし、ルクティアがウェズリアを狙ってきているのだとしたら。
これは国の存続に関わる立派な国際問題だ。
つい最近オスガリアと戦争をしたばっかりなのに……。
その際、国民は傷つき疲弊して、カカオだってとても大変な思いをした。
しかも、前回のオスガリアとは違い、相手は力を持った正体が全くわからない未知数の種族だ。
もし、前と同じように戦争にでもなれば、ケガ人も被害も酷くなるのは目に見えている。
そんなことだけは、絶対に避けたかった。
カカオが、前回どれだけ苦しんだのか、あたしが一番よくわかっている。
もう、あんな思いはさせたくない。
「本当、なんで二つの事件が一気に重なっちゃったのかな……」
ため息ばかり、ついてしまう。
しかも、こんな国際的な事件ばっかりだなんて……。
これでは、いくら人手があっても足りない。
なんとか、糸口がわかれば少しは違うかもしれないのに……。
余分な情報が増えて、こんがらがっただけだ。
「──ねぇ」
「なぁに?」
先ほどから考え込んでいたのか、言葉を発していなかった紗桜が、彼女にしては珍しく、低く、低く、囁いた。
何かわかったの?
「その事件、実は──関係しているっていう発想はどうかしら」
えっ?
それって……。
「使い魔行方不明事件と、謎のルクティア人による襲撃事件、二つの事件が関連しているってこと?」
そんなはずはないと思いつつ、恐る恐る言葉にすれば、紗桜はこっくり頷く。
えええ?
まさか、そんな。
ウェズリア侵略ならまだしも、なんで使い魔を誘拐する必要があるわけ?