あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]

 ***


 とりあえず、お城の図書室でルクティアについて調べよう。

 可能性は低いけれどもしかすると、なにかヒントがあるのかもしれない。

 何かをやっていないと、逆に不安になってしまうから。

 
「……っよし!」


 気合いを入れ直し、あたしは肩に青の薄いカーディガンを羽織った。

 部屋を出て、廊下の窓から眺めると空はほんのすこし薄暗く、肌寒い。

 ブルリと肩を奮わせると、あたしは図書室へと向かった。


「んーと、ルクティア、ルクティア……」


 図書室について中に入るものの、普段それなりにいるはずの人影は珍しく、ない。

 人が居ようが居まいが静まりかえった図書室は、とんでもなく広い。

 あたしが地球にいた頃通っていた地区の図書館のどこよりも広く、縦にも大きく、魔術を使わなければ、天井付近の本など手に届かないくらいだ。

 とりあえず、手当たり次第、本を探りはじめる。

 そういえば、最初ここに来たとき、ウェズリアの字が読めなくて困ったなぁ。

 今ではすっかり理解した。 (というより、訓練した結果、魔力によって勝手に頭の中で変換されるようになった)

 ル、ル、ルの段は~……。

 まずは歴史・文化の分類から探す。

 【ウェズリア 王家の歴史】や【魔術師学校歴代美男美女コンテスト】などなど、色んなジャンルの歴史的な本があるものの、やはりルクティアのものはみつからない。

 ルクティアのことを知っている人がいないのは知っていたけれど、ここまで文献にすら情報がないなんて。

 まず、この図書室には本が何十万とあるからなぁ……。

 ウェズリアで出版された本は全て揃ってあるし、オスガリアのものもほとんど揃っている。

 この国が建国されて、本が生み出された時から、この図書室は存在していたらしい。

 相当な年代物も取り揃えられているから、ひとつくらいルクティアのものがあってもいいはずなんだけど……。

 やはり、外界をシャットアウトしているから、本なんてそうそうないか……。

 見上げてばかりいたので、首が疲れてしまい、部屋に備え付けられているテーブルとお揃いの木製のブラックブラウンの椅子に腰掛ける。

 でも、何千万の本ってすごいよね。

 ここにそれだけの本があるのか、っていう。

 貯蔵されている本の目録だけで本棚がひとつ埋まるほどあると、聞いたことがある。


「あ、そうか!」


 すっかり忘れてた!

 ここに見えている本がすべてではない。

 普通の紙媒体の本はもちろん、魔法陣や術化されている所謂データのみのようなものが魔術を駆使して図書室保有の別の異空間に保存してある。

 そして、必要とあらば呼び出し、閲覧することができるのだ。

 特に機密度の高いものほど、厳重に守られ、それを見られる人が限られている。

 
< 64 / 87 >

この作品をシェア

pagetop