あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]



 そのデータたちは、番人によって守られており、その番人が許可しなければ見ることは叶わない。

 図書室の一画、少し入り組んだところにある本棚の前に立つ。

 その本棚はこの部屋に備え付けられている椅子やテーブルと同じ素材の木で出来ており、からっぽで、なにも入っていない。

 でも本を呼び出すのには、このからっぽの本棚が必要なんだ。

 しかも、この本棚には扉がついている。

 開いたままになっていた金の細工の施された扉をパタンと閉めた。

 そして、コンコンコンと扉を三回ノックする。

 魔力を手に込めて、手を前に翳した。


「ここに、ルクティアの資料をちょうだい!」

 
 そして、魔力を込めたまま、細やかな装飾の施された金の取ってを掴み、扉を開け放った。

 魔力に反応してパァ、と光がわずかに漏れる。

 どうかな。

 ドキドキワクワクしながら、扉の中を覗くと……。


「──あった!」


 一冊の黒い革表紙の本が、からっぽだった本棚にぽつんと置かれていた。

 手に取ると、ズシリと重たい。

 この図書室にはリストという管理者兼番人の妖精が住んでいてその子に借りたいものを話せば全て用意してくれるんだけど、彼女は気まぐれで姿を現さない時もあるらしい。

 このリストが魔力の質や量から、階級を読み取り、許可すれば文書を受け取ることができた。

 古くからこの図書室に存在してきた妖精に認めてもらえるか、その瞬間まで不安だったが無事認められたらしい。

 この手にある本が証拠だ。

 リストは照れ屋らしく、姿は見せてはくれなかった。

 図書室の妖精について教えてくれた、カカオによれば、手乗りサイズの小さな妖精らしい。

 よく図書室を利用しているし、まず魔力は絶大だし、なによりこの国の王であるカカオには姿を見せているらしい。

 同じ妖精のクコとはまた違った妖精なんだな。

 いつか会ってみたいな。

 だから早く、あたしが魔女だって認めてもらえるように頑張らないとね。


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