あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
図書室を出ると、本を胸に抱いて城の奥を目指す。
「たーしか、この辺だったよね……」
ブツブツと独り言を言いながら、石の壁づたいに歩いていく。
城の最奥部は王族のみ許された領域で、カカオに呼ばれたりした必要最低限しか立ち寄らない為、慣れていない。
普段は衛兵が城の中を巡回していたり、メイドが忙しなく働いているけれど、この辺は気配すらない。
ふと、感覚が変わる。
結界内に入ったのだ。
あたしが張った、防御結界。
カカオに頼まれて継続してやっている仕事の一つ。
魔力の分配の仕方も随分と慣れて、今ではかなりの量の防御結界を同時に扱うことができていた。
アカシの力も借りているため、ここは空気が澄んでいる。
まるで、〈千年霊木〉の近くにいるみたいだ。
まぁ、あそこは魔力の純度が高く、また高濃度なため、あたしの魔力と反発し合ってしまい、常に微弱な静電気を浴びているみたいでくすぐったかったからちょっと違うか。
辺りをキョロキョロと見渡す。
そして、しゃがみ込んだ。
ここだな。
よし。
そっと手を伸ばし、指先が石の床に触れた。
指先が触れたとたんにガタン、と床が盛り上がり、埃が宙を舞う。
手で顔をかばいながら、盛り上がった床を見ると、そこにはかつて、この世界に来たばかりの時に見た地下への階段が現れていた。
よかった、見つかった。
ホッと胸を撫で下ろすと、あたしは地下への階段を下りて行った。