あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
その視線は、あたしの持っている本に向けられている気がする。
さすがモルガさん。
察するのが早い。
「実は、この本を読みたいのですが……」
あたしはモルガさんの前の机に、持ってきたルクティアについてかかれた本を置いた。
彼はそれを興味深そうにマジマジと見つめて、呟いた。
「ほう……ルクティアの歴史についてですか」
「モルガさん、読めるんですか!?」
「……いえ、ただ図書室にある本の題名はすべて頭に入っているというだけです」
「…………」
ただにっこりと微笑むモルガさんに、あたしは呆気に取られた。
完全記憶能力……すごすぎる。
だって、図書室の本なんて何十万冊あると思ってるの?
それをすべて覚えているなんて……。
けれど普段からこの国の魔術について調べていて、記憶系の魔術を得意とするモルガさんにとっては造作もないことなのかもしれない。