あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]




「まお様に、いつもウェズリアは助けていただいております。ですから、私たちはそのまお様を援護するのが役目……。ウェズリア軍隊直属研究員であるこのモルガ、必ずなんとかさせましょう!」


 モルガさん……!

 その力強い言葉に、胸が熱くなる。


「お願いします!」


 あたしは何度も頭を下げた。

 結局、自分ではなくて人に頼ってしまうことになったけれど、これで一歩前進だ。


 それからあたしのもとにその本が届いたのは、一週間が経った後だった。

 

 本が届いたのは、日が沈み、もう外が暗くなりはじめるころだった。

 いつも通りの日課の訓練を今は時短で手早く済ませて、頼まれていた雑用を終わらせて一息ついたとき、クコが「渡すように頼まれました」と、渡してくれた。

 テーブルサイドの火を灯すのももどかしくて、窓に寄り、まだ顔をのぞかせている自然の光で本を照らし出す。

 本の表紙を見れば、そこにはあたしにも読める字で〈ルクティアの歴史〉と書かれていた。

 本と一緒に一枚のメッセージカードが添えられている。

『無事、内容が解読できました M』

 きっとモルガさんはいちから全て手で翻訳してくれたに違いない。

 彼の仕事の速さと集中力に感心しつつ、パラリと一枚めくると……そこには本の著者の名前が綴られていて、もう一枚めくると、タイトルが書かれていた。



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