あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 だから、今の下界の住民はルクティアのものを見たことがない。

 紗桜は下界にいるが、紗桜の一族は遥か昔、罪を犯し下界に落とされた。

 しかし、力の強い天使や神は、力を失わない限り、生き続ける。

 つまり長命だったため、今の今まで命を繋いできたのだ。

 紗桜が言っていた、〈千の目の天使〉という名。

 あれこそが彼女たち一族の力の名残らしい。

 紗桜の一族のことも、ごく僅かにだが本に記されていた。

 全てを見渡せる千里眼。

 相当の天力を有していなければ、扱うこともそれをその身に宿すことも叶わない。

 そんな紗桜に仕えるルクレーシャもすごい神様で、本当は天使に仕えるのではなく、仕えられる側だと紗桜が言っていた。

 とりあえず、最初の歴史はこんなもんかな。

 ふう、とため息をついて首を回す。

 本の半分にも達していない。

 まだまだいろいろありそうだけど……。

 窓の外を見ると、もう月がぽっかりと空に浮かんでいた。

 もうこんなに時間経っちゃったんだ。

 集中して読んでたから、なぁ……。

 なんとか栞を挟み、ベッドの横のランプの置いてある棚に本を置くと……そのまま意識を失うようにして眠りについた。



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