あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
集中して読んでいたせいか、読み終わると同時にどっと疲れが全身を襲ってきた。
疲れた身体をソファーの背もたれにもたれかかる。
ルクティアも、なかなかな歴史を辿ってきたらしい。
文化などを知れれば良いと思ったが、がっつりルクティア創国の歴史を読み耽ってしまった。
疲れた目頭を指で揉んで、生ぬるくなってきていた部屋全体に冷却魔法を施す。
一瞬にして冷気が部屋の中に広がって、火照った身体を冷やしてくれる。
そうすることで少し落ち着けた気がした。
と、その時、耳元で魔力が弾ける感覚が襲った。
『麻央!』
紗桜だ。
彼女はどこか興奮した様子で、声を上擦らせて喋っている。
『天界との連絡が取れたわ!』
「えっ、本当!?」
『しかも、ルクティアへと入ることを許可してくれるそうよ!私だけではなくて、麻央たちも良いって』
「それって、国交的な招待ってやつ?」
オスガリアの代表である紗桜と、ウェズリアの魔女であるあたしに声がかかった──あたしたちって言ってたからきっとカカオも含まれている──つまり、外交をしようとルクティアが動いたのだ。
しかも、正式な招待らしく、日付も決まっているらしい。
少々急ではあるが、2日後だ。
『これはチャンスとしか言いようがないわ!』
「ありがとう、紗桜!本当にありがとう!」
こればかりは紗桜に頭が上がらない。
何度も何度も上擦った声でお礼を言うと、紗桜はいいのよ、と笑った。
『私ができることをしただけ。ようやく麻央に恩を返せるわ』
「紗桜……」
『さあさ、ぼーっとしてないで、カカオ陛下にこのことを伝えて!準備だってあるでしょう?』
紗桜の叱責に我に帰る。
身体からだるさはすっかり消え去って、やる気が満ち溢れてくる。
2日後、オスガリアに迎えを遣すので、オスガリアの城に来てくれという伝言を紗桜から受け取り、あたしはカカオにこの朗報を伝えに部屋から駆け出したのだった。