あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]


 数分も歩くと、不意に視界が明るくなる。


「つくわ」


 そう紗桜の声が聞こえたかと思うと、一瞬で視界がホワイトアウトする。

 あまりの眩しさに目を閉じれば、肌に感じる感覚が今までのそれとまったく違うものへと変わる。

 突如として風が吹き荒れ、閉じていた瞳をゆっくりと開いた。


 「──ん」


 フッと、意識がはっきりした。

 目を開けると、そこに広がるのは、見事な青空。

 地平線からじょじょに薄くなるグラデーションは、どの素晴らしい写真集にも乗っていないくらい。

 いつまでも時間を忘れて見ていられるくらい、キレイだ。

 心を景色に奪われて一歩ふみだすと、芝生を踏み締めていることに気がついた。

 大地だ。

 土が、植物がここにはある。


「あ、麻央起きたわね」

「紗桜……ここは?」

「ルクティアの入り口よ。どうやら、無事についたみたいね」


 紗桜はそうつぶやくと、視線を前へと移した。

 あたしも同じ方向を見る。

 すると、そこには……。

 下界では誰も見たことがないという、神秘の天空の城が、そこにはあった。



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