あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
「わぁ……!」
思わず声が口をついて出た。
それくらい、美しく荘厳で目を奪われる。
地球にいたころ夢中になって見た某国民的ファンタジーアニメみたい!
雲の上に乗っているように見える、乳白色の石でできた古代のお城。
よく目を凝らすと、複数の白い鳥がお城の周りを飛んでいる。
ううん、あれは……天使?
城よりもあたしたちに近い場所を集団が飛び立っていく。
その人たちは皆、幾分か歳をとっていて、その図体から滲み出るのはなんとも言えない貫禄だ。
もしかしてあの長い白髭を蓄えているのは、神様とか!?
それはあたしが長年思い描いていた、理想の完璧ファンタジーの世界だ。
任務だということを忘れて童心に帰ってひとしきりはしゃいだところであたしはハタ、と動きを止める。
「満足したか?」
「……はい」
王様の抑揚のない声が上から降ってくる。
恐る恐る見上げると、いつもと変わらない無表情がそこにある。
「ごめんなさい、気を付けます」
「別に怒ってはない」
「わかっていたことよ」
なんて紗桜にもやさしーく微笑まれちゃったら、たちまちあたしだけ緊張感がなさすぎることに恥ずかしくなる。
「大丈夫よ。声に出したわけじゃないし、まだお迎え来てないし。にしてもこれは無礼じゃないかしらね。招いていてほったらかしだなんて」
紗桜はあたしに向けて女神のような笑みを浮かべて、次の瞬間には、眉根を潜めた。
「来たようだ」
静かに空を見上げていたカカオが、そう呟いて、あたしたちも釣られるように同じ方向に目線を向けると、先ほどと同じような白い鳥の大きな群れが、こちらに向かってくるのがわかった。