あたし、『魔女』として魔界に召喚されちゃったんですが。[2]
居住まいを整えて、しばらくして、白鳥の集団は目の前に降り立つ。
「ようこそおいでくださいました。オスガリア帝国 紗桜女王陛下。ウェズリア王国 カカオ国王殿下。そして魔女 まお様」
その集団の中で一人が前に進み出て、抑揚のない声であたしたちの名を連ねると、腕を組んで片膝をつく。
その動作と連動するように、後ろに控えていた数人の天使たちも、その場に跪く。
どうやら、ここではこれが最上級の挨拶らしい。
「我々はこの国の代表より、この国を案内するように仰せつかった使節団になります。この後、一度陛下方には代表に御目通りしていただき、その後この国を案内させていただきます」
使節団の言葉をふむふむと笑顔で聞いていた紗桜は、より一層にっこりと美しく微笑んだ。
「まあ、ご丁寧にしていただいて嬉しい限りです。この国はとても美しくて、先ほど少しここから拝見させていただいたかぎりでも、景色も相当なものでしたわ。あちらには町や建物が、そちらには自然豊かな森があるようでしたし、お城もとても荘厳で、案内していただくのがとても楽しみです」
「っ……!」
背筋が凍るかと思った。
とても、とても美しい笑顔でそう言い切った紗桜。
この国を観覧して回れる喜びをちりばめた言葉だったが、あたしには、まったく違う意味に聞こえた。
『あらあら、一応敬うということはわかっているのね。さっき誰かさんたちがなかなか来ないせいで時間が有り余ってたからこの辺見て回ったんだけど、確かに綺麗ね。でもさらに案内してくれるんなら、それ相応に今見た以上にすごいとこに連れてってくれるんでしょうね?」
秘められた本音が恐ろしくすぎる。
でも、紗桜の怒りもわからないこともないので、隣でにこにこ笑っておくことにする。